◆上川あや

奨学金について伺います。
一昨年、9月の定例会で、区の税を原資とした全返済型の奨学金を、札幌市で実施されているような市民、団体の寄附を原資とした返済不要の給付型に変えることはできませんかと提案いたしました。区長は、ぜひ意欲的に考えてみたい、実現したいテーマの一つと考えているとおっしゃいました。
また、子ども部長の当時の答弁も、区内の篤志家や事業者、団体から御協力いただける仕組みのあり方を、次期子ども計画における検討テーマに結びつけていきたいと前向きでした。ところが、この六月に出された次期子ども計画素案を見ますと、寄附文化の醸成という項目はたった四行、その中には若者の起業支援、就労支援とあるだけで、奨学金についてはシの字もないといった状態でした。議会答弁でのお約束はほごなんでしょうか、伺います。

◎岡田 子ども・若者部長

この八月には、国から子どもの貧困対策に関する大綱が示されましたが、貧困の連鎖によって子どもたちの将来が閉ざされることのないよう、子どもたちの育成環境を整備するとともに、教育を受ける機会の均等を図り、子どもの貧困対策を推進することは重要な課題だと認識しております。
このため、今回の子ども計画の策定に当たっては、ひとり親など生活困窮家庭の子どもへの支援ということを取り組み項目の一つに位置づけたところです。また、寄附文化の醸成についても、子ども・青少年問題協議会において、子ども計画の策定に向けた留意事項として御指摘をいただいており、検討を進めているところでございます。御指摘の奨学金制度のあり方についても重要なテーマと考えております。

◆上川あや

OECDの三十四カ国中、高等教育の授業料が有料で、しかも給付型の奨学金のない国は日本ただ一国となっています。
奨学金は給付型であることが先進国で常識です。日本学生支援機構の奨学金、無利子の枠はたった四分の一、実際には四分の三、大多数は有利子枠、その年利は三%、一旦延滞すれば一〇%という高利貸しの状態です。しかも、日本の大学生の奨学金の利用率は既に五割を超えました。実に多くの学生が、奨学金とは名ばかりの官制の教育ローンの借り主になっているんですね。
非正規雇用の広がりでその延滞も急増しておりまして、同機構の十二年度の延滞者数は三十三万四千人、延滞額は九百二十五億円、一年前より五十億円ふえました。同機構は、多重債務化への移行を防止することは教育的観点から極めて有意義という理由で、延滞者をブラックリスト入りさせると決めまして、二年間で個人信用情報機関に明け渡された個人情報は一万件を超えました。
加えて、同機構はその債権回収を民間の債権回収専門業者、つまり取立業者に委託しまして、裁判では、時効の十年を超えて不当な返済請求を突きつける事例が明らかになるなど、巧妙な貧困ビジネスと化しています。これを各地の弁護士会も問題視しまして、電話相談等が始まっているのです。
こうした中、区が経済状況の厳しい中高生を主たる対象に、全て貸し付け型の奨学金を続けることは、その後の大学教育、六割が大学、短大に進学します。多重債務者をつくり出すことにつながっているのではないでしょうか。伺います。

◎岡田 子ども・若者部長

区では、高校などに就学する際の経済的負担の軽減を図るために、無利子で奨学金貸し付けを行っております。本年度は七十九件の貸し付けとなっており、私立高校の進学者などを中心とした進学支援に一定の役割は果たしていると考えております。
しかしながら、平成二十二年度に導入された高校授業料無償化の影響もあり、申込者は減少傾向にあり、時代に合わせて、より効果的な制度とするよう見直しが必要と考えておるところです。

◆上川あや

区の全貸し付け型の奨学金が、その後の大学入学の奨学金とあわせて多重債務化しているのではないかと伺いました。答えてください。

◎岡田 子ども・若者部長

現在の奨学金ですけれども、二十五年度の実績で、滞納者数五百八十名ほどあります。分納等のお約束のもとに返済を続けている方も含めた数字ですが、こうしたことを踏まえますと、そのようなこともあり得ると思われます。

◆上川あや

都内を見渡しますと、お隣の調布市、武蔵野市、町田市、小金井市、日野市、国分寺市は全て市の奨学金を返済不要の給付型にもう切りかえました。確認したところ、全てが一般財源から出ています。また、新宿区、江戸川区も寄附金を原資とした給付型が並行導入されています。若者支援をうたう当区の奨学金も給付型であるべきと考えます。
区長は、先ごろ区内の児童養護施設、育成園に行った際に、児童養護施設を出た若者支援に絡めて給付型の奨学金が必要だとおっしゃったと私は耳にしましたが、出先でリップサービスをするのみでなく、足元から制度を変えるべきと考えていますが、区の対応はいかがなんでしょうか。

◎岡田 子ども・若者部長

御指摘のように、幾つかの自治体で給付金を募り、基金を創設して制度を運用している例がございますが、奨学生の対象者数や給付金額により事業の規模が大きく変わり、安定した原資を確保するためには難しさもあり、一般財源を投入せざるを得ない状況もあると聞いております。
返済の要らない給付型の奨学金というものにつきましては、公平性の観点から、公費を原資とした制度とすることには課題が多いと考えております。対象をどのように絞り込むか、必要な資金の確保はできるのかといった課題について、慎重に検討する必要があると考えております。

◆上川あや

この間、私からは、財団の造成、設立などの面倒な手続なしに篤志家を顕彰することができる冠奨学金の創設を提案してまいりました。二年たって何の動きもないんですが、同様の取り組みは大阪府でも積極的に推進されまして、二〇一一年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンからの御寄附で一人最大百万円を給付できる、差し上げるというUSJ奨学金がスタートしています。ぜひ世田谷区でも、これ以上間を置かずに、区長の指揮のもとその実現を図っていただきたいと考えますが、区長に期待してよろしいのかどうかをお答えいただければと思います。

◎保坂 区長

二年前の答弁以降、進捗が特段ないということは大変よくないことだと思います。
児童養護施設は福音寮のほうでございまして、そこで五百万円の債権を抱えていると。これは豊中市で活躍している若者、女性でしたけれども、そこを見ると、やはり今回、子どもの貧困対策大綱でも、高校段階ですが、給付型奨学金のことが盛り込まれています。区の政策として、今議員御提案のような寄附を原資にした奨学金、そしてさらに、最も困難な若者から順次支援をしていく体制に、実施に向けて準備をするよう所管に指示したいと思います。

◆上川あや

これで終わります。