◆上川あや

初めに、人工内耳装用者への支援について伺います。

人工内耳は、補聴器では聞こえの改善が望めない高度難聴の方々に、手術で内耳の蝸牛という部分に電極を植え込み、神経を電気的に刺激して聴覚を取り戻すという画期的な医療機器です。耳にかけたマイクで音を拾い、スピーチプロセッサーという体外機器で音を電気信号に変え、無線で内耳の電極に伝えることで音声を認識させます。
日本では昭和六十年に手術の第一号が行われ、その手術は平成六年四月から保険適用にもなりました。現在手術を手がける病院は百カ所にまでふえまして、その装用者も七千人を超えたとされています。
しかし、一度手術をすれば一件落着とはいきません。一台百二十万円もする体外機器スピーチプロセッサーは、数年から十数年で交換しなければならず、その買いかえ費用が大きなネックになっています。
その保険適用については、平成十八年から修理等が困難で医師が破損していると判断した場合には、部品の一部に保険が適用されるようになりました。しかし、ある一まとまりの部品単位で故障した場合には保険適用でも、それより細かな部品単位で故障したケースでは適用不可となり、結局丸ごと買いかえを迫られたりもする。また、販売終了となった機種からやむを得ず新しい機種に買いかえる場合にも保険が適用されないケースがあることが問題になっています。
さらに、他の用途に使えない専用電池の買いかえ費用もばかになりません。電池は二、三日しかもたず、その買いかえ費用に月に三千円程度のコストがかかりますが、これが生涯続くということです。
こうした負担を区で軽減できないでしょうかということが今回の問いです。区に確認しましたところ、区内の人工内耳装用者の総数についての把握はないそうです。
一方で、自立支援医療の支払いで少ないくとも五件、当該の手術の実績は区内でも確認をされたと伺いました。また、国内最大の人工内耳装用者の団体、ACITAという団体に伺ったところ、区民の会員登録が四名あることが確認できました。現に区でもこのニーズはあるのです。
現状で、聴覚障害者のための補聴器ユーザーに対しては、補装具としての給付制度があります。その買いかえにも公費の助成が区費も含めて出ています。しかし、より重度な障害になると、途端に支援が全くないということは、私はおかしいと感じています。
区はこの当事者の多大な負担についてどのようにお考えなのか、まずお聞かせください。

◎知久 障害施策推進課長

体内に埋め込んだインプラントと呼ばれる装置に信号を送る、体外に装着するスピーチプロセッサーにつきましては、修理不能、部品交換不可と医師が判断した場合、健康保険の対象となります。
東京都心身障害者福祉センターに確認したところ、性能の向上した新しい機種への買いかえを希望される方もいらっしゃるとのことで、こういった場合、健康保険の対象とはならないことから、当事者の負担は大きいものと認識しております。
人工内耳の埋め込み手術について、障害者自立支援医療制度の給付実績は、平成十八年十月以降、五件決定がございました。全て平成二十二年以降の実績となっていることから、聴力を補助する器具として広く普及している補聴器と比較し、人工内耳は近年になって普及し出したものであると認識しております。
総合福祉センターにおいても、聴覚に関する御相談を受けておりますが、人工内耳についての御相談は余りなく、多くの場合、病院の言語療法士の指導のもとリハビリを行っているものと考えております。
今後区としましては、利用者のニーズや人工内耳に対する医療、福祉のあり方を見定めていく必要があると考えております。

◆上川あや

人工内耳用プロセッサーの買いかえ費用に関しては、前出の当事者グループの調べですと、既に国内二十二の市と六の町が日常生活用具に指定するなどして給付するなど対象を広げて支援しています。
熊本県天草市では百十万円まで補助が出る、また同県の菊池市、宇土市でも百万円までその買いかえ費用を助成しています。また、人工内耳用の専用電池についても同様に五十五市と十六の町で助成をしています。区としてもそれぞれの支援策の導入をぜひ検討いただきたいと考えるのですが、いかがでしょうか。

◎知久 障害施策推進課長

スピーチプロセッサーの買いかえは医療保険の適用が優先されることと考えます。一方、新しい機種への買いかえなど現在、医療保険の適用となっていないケースもあるため、今後、先ほど御答弁したことともあわせまして、福祉での支援のあり方を見定めてまいりたいと考えております。
スピーチプロセッサー用の専用バッテリー、専用電池等でございますが、こちらの買いかえにつきましては、比較的消耗も速いにもかかわらず、医療保険の対象となっていないことから、経済的な負担になるものと認識しております。
区では、障害者の日常生活の利便向上を目的として、重度障害者(児)日常生活用具給付事業を実施し、現在六十二品目を給付対象にしております。品目の追加などは、当事者からの御要望、御意見、品目の必要性が継続的に見込めるか否か、価格等購入のしやすさなどを踏まえ、関係所管による検討委員会において検討を行っております。
スピーチプロセッサー用の専用電池につきましては、重度障害者(児)日常生活用具給付事業の検討委員会の中で、他の候補品目とあわせ検討していくことになると考えます。

◆上川あや

スピーチプロセッサーの買いかえ費用については状況を見定めるということのようですが、どのようなときに全て自腹になっているのか、先行事例もしっかりと確認して取り組んでいただきたいと思います。