◆上川あや

大項目の最後に、区教育委員会の性的マイノリティーへの対応について伺います。

区教委は、一昨年二月の私の議会質問に、区立小中学校にみずからの性別に違和感を抱える児童生徒がいる可能性について実態調査を行うことを約束してきましたが、その実施状況を伺うと、何ら成果の得られない調査手法であることがわかりました。
調査対象は、区立の小中合わせて十数校、区立校全体の九分の一程度です。約百六十名という極めて限られた教員を対象に、匿名で書かれた調査票を回収し、現に性同一性障害を疑われる児童生徒が小中ともに確認されたとのことですが、だれが回答したのかは全くわからない調査です。これでは悩める児童生徒がどのクラスに在籍し、何に悩み、学校でいじめに遭っていないのか、家族や医療機関との関係はどうなのか等、肝心なことが何一つわかりません。つまり、不登校やいじめ、自殺念慮につながる割合が非常に高い問題であるにもかかわらず、リスクを抱える生徒の支援には何一つ役立たないのです。

そこで伺います。第一に、悩みを抱える児童生徒、保護者を支援できる調査を求めます。
埼玉県、島根県の両教育委員会が行った調査では、県内すべての公立小中高校、特別支援学校が調査対象となり、性同一性障害が疑われる事例については追加のヒアリング調査まで行い、個別の支援につなげていると伺っています。区教委の調査も全校を対象に支援につなげられる調査とするべきです。見解を求めます。

第二に、調査対象を性同一性障害に限定せず、どちらの性に引かれるかを示す概念、指が向かうと書いて性的指向も含めて調査をするべきです。
区教育委員会は、従前から同性に引かれる児童生徒の学齢期の悩みについてもその深刻さを認め、相談対応の必要性を答弁してきました。にもかかわらず、性的指向を調査から外すのでは道理に合いません。
昨年度、宝塚大学の日高庸晴氏を中心に、東日本の中核市、西日本の特例市等を対象に行われた児童生徒の性的指向と性同一性障害に関する厚生労働省科学研究費事業に基づく調査では、市立小中学校の全教員を対象に調査が実施され、同性愛について生徒とかかわった経験を持つ教員が養護教諭の二三・三%、一般教員の五・八%に達し、現に存在する課題であることが浮き彫りとなっています。区教委も現に存在する課題から目をそらすことなく、性的指向を含め調査するべきです。見解を求めます。

第三に、スクールカウンセラーに寄せられた声の把握です。
現状で、児童生徒、保護者からスクールカウンセラーに寄せられた相談は、課題別に整理の上、その数だけが学校と教育委員会に報告されることになっています。しかし、その分類項目に性に関する相談等はなく、実際、性同一性障害や同性愛に関する相談事例があるのかどうかすら区教委にはわからないそうです。
大阪府教育委員会では、性に関する相談内容を分類項目の一つに加えて以降、これらの相談が現に捕捉され、課題として認識されるようになったと伺っています。区教委も報告のあり方をより実態をつかめるものに変えていくべきです。見解を伺います。

最後に、以上の調査を踏まえ、個別の児童生徒、保護者の相談にどう対応を図るのか、他の自治体同様、この問題に精通した医師、カウンセラー等専門家を交えた検討体制も必要と考えますが、いかがでしょうか。現状のままで対応できるのかも含め見解を伺います。

◎古閑 教育政策部長

性的マイノリティーへの対応について、四点の質問にお答えします。

最初に、悩みを抱える個人を特定でき、具体的手だてのできる調査を行うべきとの質問にお答えします。
教育委員会では、昨年度、人権教育推進委員会を設置し、その取り組みの一つとして、教職員が受けた人権課題にかかわる児童生徒からの相談の状況について実態把握を行いました。約百六十名の区立学校教員の協力を得て、児童生徒や保護者から、女性の人権、障害者の人権、自分の性別への違和感、交際している異性からの暴力などの相談を受けたことがあるかどうかについて、アンケート調査により尋ねました。その結果、それぞれの質問について、内容によって数の多少はございますが、相談を受けたことのある教員がいたことがわかりました。
文部科学省では、性同一性障害にかかわる相談への対応について、個々の児童生徒の実態に応じたきめ細やかな対応が必要であり、本人と保護者の意向を十分に配慮しつつ、児童生徒の実情を把握した上で相談に応じることとしており、実態を調査するような場合にはプライバシーへの十分な配慮などが必要であると考えております。
こうしたことを踏まえて、昨年度調査を実施いたしましたが、今後の調査のあり方、進め方などについては、議員ご指摘の課題も共有しつつ総合的に研究し、今年度も設置している人権教育推進委員会において検討を進めるとともに、児童生徒が相談しやすい体制づくりにも努めてまいります。

次に、性的指向に関する悩みにも対応できる調査を行うべきとのご質問にお答えします。
今回の調査においては、性に関することについて、自分の性別に違和感を感じていることなどについて児童生徒、保護者から相談を受けたことがあるかという内容で教職員に質問を行いました。
教育委員会では、区立学校に性同一性障害の子どもだけでなく、性的指向による悩みを持つ子どもも在籍しているとの認識のもとで、今後の調査の内容や進め方等についてさらに検討してまいります。

次に、スクールカウンセラーから寄せられる相談内容の報告項目の中に性に関する相談について項目を加えるべきとのお尋ねにお答えします。
児童生徒や保護者からスクールカウンセラーが受けた相談状況につきましては、毎月スクールカウンセラーから教育委員会へ報告されております。東京都が配置している中学校スクールカウンセラーからは、不登校や友人関係、適応、発達など都が定めた二十項目について、区が配置している小学校スクールカウンセラーからは、発達段階を考慮して分類した十項目について報告されております。児童生徒や保護者がどのようなことに悩み、困っているのか、相談状況をもとに把握、分析し、学校や教育相談室における教育相談機能の充実や学校支援ネットワークの強化などの取り組みに活用しているところでございます。
ご提案いただいた性に関する相談項目の追加につきましては、性的マイノリティーも含めた人権教育の推進の観点も踏まえ、性に関する悩みや相談を受ける体制も充実させながら、今後、検討及び調整を図ってまいりたいと考えております。

次に、医師等専門家を交えた検討の必要性についてお答えします。
昨年度から、子どもたちの実態や学校について理解の深い心理の専門家や人権教育に精通している学識経験者、そして小中学校の校長会の代表等によって構成された人権教育推進委員会を設置し、児童生徒の実態把握のほか、人権教育にかかわる研修会の実施、他の自治体の実践状況の把握などについても取り組みを進めてまいりました。また、区立中学校の協力を得まして、性的マイノリティーや性の多様性をDVDの教材をもとに理解を深め、性的マイノリティーに悩む生徒がそのことを打ち明けるという場面のロールプレイを通して、一人一人の生徒に自分ならばどのように対応するかを考えさせるなどの活動を取り入れた授業を実施し、その分析を行いました。

今年度も引き続き委員会を設置しておりますが、昨年度の実態把握を含めた取り組みの状況を踏まえまして、教職員向けの研修の充実を図ったり、授業の工夫、充実を進めたりしていく予定でございます。また、児童生徒などからの相談体制の充実を図るとともに、必要に応じて個別の課題に精通した専門家との連携などについても研究を行い、各学校における人権教育の充実、子どもたちや保護者への支援の充実に向けた取り組みを進めてまいります。以上でございます。

◆上川あや

ご答弁ありがとうございました。