◆三十六番(上川あや 議員)
まず初めに、高齢者難聴について伺います。
急速な高齢化が進行する中、聴覚に衰えを感じる高齢者も増加の一途です。
細胞の劣化に伴う高齢者難聴は、有効な予防法、治療法が確立されていません。
七十代以降では約半数が難聴の状態にあると言われ、高齢者を含む難聴者は全国に一千万人近いとの推計もあります。
家族との団らんやテレビが楽しめない、講演会に参加してもその内容がわからないなど、当人の感じる孤立感、社会参加の困難は重大な問題ですが、一般の認識は、年だから仕方がないというレベルにとどまり、それを補う効果的な技術が開発されているにもかかわらず、その有効な社会的支援がまだまだ不足しています。
聞こえの困難といえば一般に聴覚障害者が思い浮かびますが、日本の障害者認定は厳しく、当人の困難を正しく反映していないと言われます。
聴力が四十デシベルになると、通常、補聴器が必要になりますが、聴覚障害の認定は七十デシベルという高度の難聴でなければ得られません。補装具としての補聴器の交付は障害の認定が前提となっており、必要とする方のごく一部にしか行われていません。
そこで、伺います。
区は高齢者難聴の現状についてどのような認識をお持ちでしょうか。障害と健常の境にある方々の現状認識について、区の見解をお聞かせください。
補聴器については正確な情報がまだまだ不足しています。
よくある誤解の一つは、つけてすぐに効果を発揮するというものです。
補聴器は本来、聞こえの特性と生活環境に応じて製品の選択と調整を行い、時間をかけてならしていくものですが、こうした情報はほとんど知られていません。
このため、大部分の高齢者は、手短な量販店、通信販売などで高額な補聴器を購入していますが、うるさいばかりで肝心な内容が聞き取れない、つけていると頭が痛くなるといった結果に終わる場合も少なくありません。
十分な効果を得られる例はむしろ少ないのが現状と言えそうです。
こうした流通の問題点を改善するため、平成六年より認定補聴器技能者が制度化されましたが、これまでのところ区内の認定専門店は四店舗にすぎず、その存在も知られていません。
問題の根本は何ら解決されていないのです。
人間関係を支えるコミュニケーションを支援し、消費者の不要な混乱や不利益を排する情報提供が区に求められます。
生活文化部長のご見解をお願いいたします。
また、補聴器のフィッティングについては、区内に評価すべき取り組みがございます。
区の外郭団体である総合福祉センターでは、障害者手帳の有無にかかわらず、個別的、専門的な聞こえの相談を実施しています。
これはかつての東京都障害者福祉センターを倣って始まったものだそうです。
しかし、既に都そのものは、こうした専門的、個別的な相談を後退させており、その点でも世田谷の取り組みは非常に貴重なものとなっています。
区は今後とも従来どおりの柔軟な姿勢と一人一人に対応した取り組みを堅持なさるべきだと考えます。
区の方針をお聞かせください。
また、こうした貴重な取り組みをより多くの区民に知っていただく工夫が必要ではないかと思います。
「区のおしらせ」には年に一度、聞こえの相談会が紹介されますが、イベントの広報だけでは通年行われている相談業務が見えてまいりません。
区が発行する障害者のしおりでは補聴器相談の窓口を紹介していますが、区外の公益法人を紹介するのみで、区の総合福祉センターの取り組みが紹介されておりません。
広報の現状にさらなる工夫が必要だと考えますが、区のご所見をお願いいたします。
続きまして、情報保障に関連して二点お伺いいたします。
私は、昨年の定例会で、手話を使えない聴覚障害者に対応した要約筆記者の養成と派遣に取り組むよう区に求めました。
区は財政的な問題を含め検討すると表明なさいましたが、その後の進捗状況についてご報告を願います。
また、補聴器は音源から二メートル離れただけでその内容の理解が難しくなります。
このため多人数での会議、マイクを通した音声の理解は難しく、イギリスやドイツでは、補聴器に明瞭な音声を届ける電磁誘導ループなどの設置が公共施設に義務づけられています。
一方、区の集会施設では、総合福祉センターの会議室にループが設置されているにすぎません。
つまり区内の補聴器ユーザーには、事実上、会場選択の自由がないということです。また、区の施設で行われる催しのほとんどはその理解が難しいと考えます。
区は補聴援助システムの整備を図るべきだと考えますが、区の見解をお聞かせください。
続いて、聴覚障害者と介護保険制度についてお伺いいたします。
さきの質問からもおわかりのとおり、聴覚障害は情報入手の障害であり、コミュニケーションの障害であります。
聴覚障害者の方々にとって十分な情報保障がなければ、いずれの社会的資源も利用は困難となりますが、介護保険の利用も例外ではありません。
現状では、手話を主要なコミュニケーション手段とする聾者と直接の意思疎通ができるケアマネジャー、ヘルパーがほとんど存在していません。
聴覚障害の特性をよく理解した人材もほとんど存在しない中でプランの作成が行われ、意思疎通のできない方から介護を受けているのが現状です。
このため、単身の聴覚障害者の多くは、その利用申し込みさえちゅうちょすると伺います。
区に寄せられる実際の声はあるでしょうか。
切実なニーズを潜在化させていることを強く危惧いたします。
また、高齢者難聴の方、疾病により失語症となった方々などにもコミュニケーションの支援が必要となります。それぞれ区の認識をお聞かせください。
また、現状では、ケアマネジャーやヘルパーに要約筆記者、手話通訳者をつける対応が必要となりますが、区の対応についてご説明を願います。
近年、手話を使えるヘルパーが全く存在しない現状を打開するため、当事者団体みずからがヘルパーを養成する取り組みも始まっています。
聴覚障害者自身がヘルパーの資格を取得する例もふえつつあるといいます。
しかし、実際のところ、へルパーとしての就業も登録も果たせていないと伺います。
現状ではヘルパーを派遣する事業者の多くが効率よく利用者の数を稼ぐことで経営を成り立たせており、広く薄く存在する聾者に対応することは経済効率にそぐわないといいます。
熱意ある人材がいながら、実在するニーズに生かされていないのです。
経済効率を理由に公平なサービスを受けられない区民がいることは大問題です。
当事者団体の努力だけでは前途は決して楽観できません。
私は、こうした民間任せでは難しい分野にこそ公の積極的な支援が必要だと考えます。区としてできる支援策はないものか、区のご所見をぜひともお聞かせください。
◎秋山 在宅サービス部長
高齢者難聴への区の対応につきまして、順次お答えさせていただきます。
まず、高齢難聴者への基本的認識でございます。
高齢になり耳が聞こえにくくなる方が相当数いらっしゃると考えております。これらの方々は周囲の方とのコミュニケーションがとりにくくなりますので、閉じこもりにつながらないよう、難聴者のみならず地域の中で高齢者を支える仕組みが重要であると考えております。
世田谷区の中で身体障害者手帳を持っている聴覚障害者について申し上げれば、八月現在、約千五百五十人、そのうち約六三%が六十五歳以上の高齢者です。
手帳所持者には補聴器の給付制度がありますが、手帳を持っていない方も含めて高齢の難聴者への取り組みの必要性は認識をいたしております。
世田谷区では、身体障害者手帳を持たない方に対しても、総合福祉センターで聞こえに関する相談を実施いたしております。
次に、要約筆記の件で区の進捗状況、それからもう一つが補聴援助システムの整備についてでございます。
多くの中途失聴者、難聴者に対しましては、手話にかわって要約筆記が有効なコミュニケーション手段であり、高齢化が進む中で、その需要はふえてくるものと考えております。
この間、内部で要約筆記の研修について検討を進めてまいりました。今後、関係団体とも連携しながら、要約筆記者の育成などに取り組んでまいります。
次に、補聴援助システムでございますが、これは講演会や劇場などにおいてマイクを使って話す人の音声を補聴器を利用する方が聞き取りやすくするものです。
現在は、世田谷区では文化生活情報センターの劇場と、委員お話しのありました総合福祉センター研修室の二カ所に設置をしております。
補聴援助システムには目的に合わせて幾つかの方式がございますので、有効性の検証も含め、今後研究してまいりたいと考えております。
また、今後の情報保障につきましては、難聴者に対する理解や配慮という総合的なバリアフリーの取り組みの中で検討してまいりたいと考えております。
それから、手話のわかるケアマネジャー、ヘルパーの不足に対し、聴覚障害者の多くが介護保険の申し込みをちゅうちょすることに関して、それから区にそういう声が寄せられるのか、それからコミュニケーションの支援に対する認識というご質問をいただきました。
介護保険等の申請やサービスを受ける際に、聴覚障害者の方々が十分に意思を伝え切れない場合もあると考えられます。
現在は、介護保険の手続などにおきましては、ご本人の筆談や手話通訳者の派遣で対応しているところです。
手話のわかるケアマネジャーやヘルパーの育成等につきましては、障害者団体等からも声が寄せられております。
そのため、現在総合福祉センターで行っている障害者の理解に関する研修をケアマネジャー研修に位置づけ、窓口や現場でサービスを提供する職員や事業者は常に相手の立場に立って接するよう指導しております。
介護保険制度の利用のみならず、コミュニケーション支援は大切なものだと認識をしております。
今後も聴覚障害者の方々が介護保険の利用申し込みを安心してでき、かつ介護サービスなどを不自由なく受けられるようケアマネジャーの育成に取り組むとともに、事業者や障害者団体と協議、連携してまいります。
ケアマネジャーとヘルパーに要約筆記者、手話通訳者をつけることにつきまして、区は昭和五十一年から手話講習会を実施いたしまして、多くの手話通訳者の養成に努めてまいりました。
この中にはヘルパーの資格を持ち活動する人もいましたが、介護保険制度の中では、この手話の能力を十分に活用しているとは言いがたい状況がございます。
意思疎通を図るためには、現在では筆談で確認し合ったり、手話通訳者を派遣することで対応しております。今後も必要に応じて手話通訳者の派遣を行うことによりまして、聴覚障害者の方との意思疎通を図ってまいりたいと思います。
それから、直接対応できるケアマネジャー、ヘルパーの確保に向けてということについてでございます。
適切なサービスを受けられるためには、ケアマネジャーやヘルパー自身の理解とともに、事業者が聴覚障害者のコミュニケーションについて理解をすることが不可欠です。
区内の障害者団体等と協力をしながら、事業者が手話や要約筆記など聞こえにくい方たちの理解を深めるとともに、当事者の方々自身が事業に参入することなどについても、その可能性について検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
◎青木 生活文化部長
消費者保護の観点から、消費者に対して補聴器の正確な情報発信が必要ではないかというご質問にお答えを申し上げます。
消費生活課の事業には、さまざまな相談に応じる消費生活相談と、あらかじめ知っておきたい生活知識を提供いたします消費者教育啓発がございます。
補聴器のような体の機能を補う機器類は精密機器でありまして、オーダーメードで購入するのが望ましく、購入に際しましては専門家のアドバイスを受けることが大切であるのは議員ご指摘のとおりだと思います。
私どもではこのような点を情報提供しているほか、業界団体の専門の相談室を紹介するケースもございます。
また、東京都消費生活総合センターには補聴器の使い方という貸し出し用のビデオが用意されておりますので、これらを案内する場合もございます。
補聴器に関しては、契約の解除や代金の支払いについての相談は寄せられておりますけれども、商品選択の方法や安全性などについての相談は今のところございません。
ただし、高齢者などに消費者被害が増加している現状を踏まえまして、今後ともご相談や啓発活動、あるいは情報提供にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。以上でございます。
◎若林 保健福祉部長
高齢者難聴への対応に関して、総合福祉センターの取り組みについてご質問いただきました。
総合福祉センターにおける補聴器のフィッティングは、言語聴覚士等の専門家が本人の状態に合わせた補聴器を選び、最適な状態に補聴器を調節するものです。
また、補聴器は万能でないことも含め、正しくご理解をしていただき、正しい機能を知っていただくこと、こういったことは難聴の方々にとって必要なことと考えております。
総合福祉センターでは、電話やファクスによる予約制で週二回、高齢者ご本人やご家族からのフィッティング等聞こえないことに関する専門的な相談、指導を行っておりますが、今後とも充実に努めてまいります。
また、PRに関してでございますが、総合福祉センターの事業全体のPRも含めて、わかりやすさに配慮しながら、改善に努めてまいります。
以上です。
◆三十六番(上川あや 議員)
ご答弁ありがとうございます。それぞれおおむね私が理解しているところと共有していただいているご理解だと思いました。
幾つかの要望をさせていただきたいんですけれども、最後にご説明いただきました総合福祉センターですけれども、これだけ多くの区民の方が、聞こえない、聞き取れない、そういった方が多いにもかかわらず、なかなかこういった取り組みが見えてこないなということを感じます。
実際の所管の方とお話をしていても、外郭団体に今は委託している関係もあるんだと思いますけれども、その取り組みが直接把握されていないということを感じまして、これは総合福祉センターに限らず、それぞれの所管で抱えている課題なのかもしれないということを思いました。
それから、秋山部長の方でご紹介いただきました実数というものは、障害者手帳をお持ちの方の高齢者、六十五歳以上ということの実数ということで、実態としては現状の把握がしっかりとあるものではないということだと思います。
七十歳以上の大体五割の方が高齢者難聴になるんだそうです。
これを区のデータに当てはめてみますと、今月の一日現在で区内には七十歳以上が九万六千九百人いらっしゃるんだそうですね。ですので八十万人の人口がいるうち、実際には五万人近い方が、聞こえない、聞き取れない、こういったことがあるということで、これはそれぞれの所管がそういった区民の方々に対応する必要があるということで、共通の理解をいただきたいと思っています。
あと、聴覚障害のヘルパーの件ですけれども、やはり経済のベースになかなか乗りにくい。
これは公のあるべき役割の一つだと私は思っていますので、具体的な対処をお願いいたします。
これについては今後とも注意を払ってまいりたいと思います。
その他については決算特別委員会の方で伺わせていただこうと思っています。
以上、終わります。