◆三十六番(上川あや 議員)
質問通告に基づき、順次質問させていただきます。
まず初めに、区立小中学校における不登校生徒の取り扱いについて質問させていただきます。
文部科学省は昨年、学校基本調査の結果、全国の小中学校に合わせて十三万一千人の不登校児童生徒がいると発表いたしました。
同省が不登校について調査を開始して以来、その数は初めて減少に転じ、カウンセラーの派遣や適応指導教室の成果との報道もなされています。同省では不登校を、年間三十日以上の長期欠席者のうち、何らかの心理的、情緒的、身体的、社会的要因、背景によって児童生徒が登校しない、あるいは登校できない状況にあることと定義。
これを世田谷区に当てはめますと、昨年十一月末の時点で小中学校合わせ三百二十七名の不登校児童がいる計算になります。
世田谷区では、他区に先駆けてスクールカウンセラーを全校に配置。不登校の生徒宅にメンタルフレンドを派遣するほか、適応指導学級として、城山、尾山台の二つのほっとスクールを開設し、情緒障害学級、ひなぎく学級においても不登校生徒を受け入れるなどの取り組みを進めています。
区では、ほっとスクールやひなぎく学級への通室を、原籍校に戻る経過措置ととらえ、一部フリースクールへの登校とあわせて区立校への出席日数に算入していますが、これら児童の大半は原籍校に戻らないのが実態であり、建前と結果との間にはかなりの隔たりが存在しています。
多様な受け皿を用意し支援する区の姿勢には一定の評価が与えられるべきです。
しかし、大半の生徒が学校に戻らない現状にあって、ほっとスクールなどの取り組みも、生徒に本来必要である学力を保障する場にはなっていない現状に多くの問題が存在していると感じます。
適応指導学級に通学すれば、見かけ上、不登校の生徒は減りますが、これはていのいい不登校隠しともなり得ると危惧いたします。
区のご所見をお聞かせください。
第二に、適応指導教室等における便宜的な出席日数さえ得ていない、いわゆる完全不登校の児童生徒についてお伺いいたします。
十一月末現在、これら生徒は区内の小中学校に合わせて百五十七名在籍すると伺います。
区立校の卒業認定は、本来必要である出席日数に満たない生徒であっても、事実上、その卒業を認めるのが一般的な対応と伺います。
中には、全く通学実績のない生徒にも卒業を認めた例があるといいます。いずれ社会に巣立つべき彼らにとって、義務教育が未修了である、こうしたレッテルを避ける配慮は当然必要であろうと思います。
しかし、その一方で、社会生活に必要な最低限の学力を持たずに卒業させたところで、早晩、その社会生活に困難を覚える卒業生が生まれる可能性を無視するわけにはまいりません。
区は、便宜的に卒業を認め、その責任を全うしたと考えるのではなく、卒業後も適切な学習機会を提供するなど、何らかの見守りが必要と考えます。
区の見解をお聞かせください。
引き続きまして、区内の新星夜間中学校について質問いたします。
夜間中学は、何らかの理由で義務教育を終えることのできなかった人たちがみずから学習機会を求めて訪れる、本気で学びたい者が通う学校であります。
戦中戦後の混乱と貧困の中で、あるいは韓国・朝鮮人であったという不利において学業を修めることが果たせなかったご高齢の方々、もと不登校だったという生徒、中国残留孤児やその家族、在住外国人らがみずからの足で歩いていく力を培うまなびやです。
ご高齢の生徒さんには、幼いころから働き詰めに働いて、年を重ねた今、ようやく勉強する時間を得たという場合が大半と聞きます。過去にかみしめた悔しさから決死の覚悟で学校を訪ねる場合も多いのだといいます。
せんだって私も一日体験入学をさせていただきましたが、年齢も国籍も異なる幅広い生徒が互いを認め合うやわらかな空気、個々の能力に応じて粘り強く行われる指導には、教育の原点を見る思いがいたします。
みずからの人生を胸を張って生きていくために温かな手を差し伸べる教育の場がこの世田谷にあることを、私は一人の議員として誇りに思います。
区長はどのような評価をお持ちでしょうか。
区長と同世代の生徒も学ぶ夜間中学へのご所見をぜひともお聞かせください。
夜間中学校の空気を感じ、生徒や先生方との会話を通して、私は、夜間中学が不登校経験者などへの学習機会の提供に大きく寄与する可能性があると感じますが、夜間中学校が義務教育を提供する場である以上、中学を一たん卒業した者には二度と入学することができません。
不登校生徒らの将来を展望する上で、区は単に便宜的な卒業を与えるのみでなく、みずからの意思で学ぶ夜間中学という選択肢も視野に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
生徒の年齢を一切問わず、小学校低学年のレベルから根気強く学べる教育機関、さまざまにコンプレックスを抱える生徒がそのハードルを乗り越えて参加できる学びの機会は、社会にほとんど存在しておりません。
区は恣意的に情報を操作することなく、夜間中学を含めた選択の機会をきちんと提供すべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。
続きまして、夜間中学をめぐる広報について伺います。
全国夜間中学校教育研究会では、国内で義務教育を修了していない者がおよそ百七十万人に及ぶと推計しています。
全国に夜間中学は三十五校しかなく、社会の潜在需要が大きいにもかかわらず、区の広報の取り組みは非常に問題が多いと感じます。
第一に、「区のおしらせ」に掲載している夜間中学の案内は漢字の羅列であり、読み手の識字程度に何ら配慮がありません。読み書きを初歩から学びたい、そういった切望を無視した対応は本末転倒です。
第二に、平仮名を多用した東京都作成のチラシやポスターの活用についてですが、人の目に触れない広報に何の意味があるのでしょうか。
チラシは区内でただ一カ所、学務課のカウンターに配架するのみです。区内にあるたった一枚のポスター、これも学務課の前に張り出されているだけです。
区として、夜間中学の存在をきちんと広報していくおつもりがあるのか、お答えください。
最後に、都は本年一月末、夜間中学の日本語教師を新年度から突如削減する方針を打ち出しました。
区は、夜間中学日本語学級のきめ細かい教育の質を今後どのように維持するおつもりでしょうか。
都の突然の決定を言うがままのむおつもりであるのか、あわせてお伺いいたします。
以上、壇上からの質問を終わらせていただきます。
◎田中 教育政策担当部長
ではまず、ほっとスクールにおける学力問題についてお答え申し上げます。
何かのきっかけで登校渋りになりますと、学校での学習から大きくおくれてしまい、その結果、不登校が常態化してしまい、さらに学習がおくれるというケースが多いと認識してございます。
ほっとスクールでは、こうしたイタチごっこの関係を断ち切るために、午前中は学習の時間を設けて、個々の子どもの興味や関心に合わせた学習指導を行っております。
スタッフとの一対一による学習は、ある程度学力を伸長させることができていると判断しております。
しかし、カリキュラムを作成し体系的、網羅的に学習する学校と比較いたしますと、全体の学習量は著しく少なく、議員ご指摘のとおり、総体的な学力の問題はあると思います。
不登校の子どもにとって、学力を向上させるために学びを強調することは、不登校の状況を一層悪化させる場合が多くなる可能性があります。
ほっとスクールでは、子ども一人一人の状況を見きわめつつ、まず、一科目の学力を向上させることで自信をつけさせ、その自信から仲間との関係性を構築できるようにして学校に復帰させることが大切だと考えております。
学ぶ意欲のある子どもに対しては、いつでも体系的に学べる環境を提供することを目指しまして、ほっとスクールで世田谷区教育ネットワークのイントラネット上にある学習支援ソフトを利用できるようにしており、この活用を図っていきます。
次に、完全不登校の生徒に対して卒業をどのように認めているか、あるいはどのような考えを持っているか、こういうことでございました。
議員ご指摘のとおり、不登校生徒に対しては、将来の社会生活を視野に入れた対応が必要であり、そのための学力や社会性を培っていくことはまことに重要なことであると受けとめております。
こうしたことから、各学校におきましては、不登校生徒に対して関係機関の協力を得てさまざまな形で働きかけ、一人一人の生徒の状況や特性を把握するとともに、特に卒業認定に当たりましては、議員ご指摘の問題点がさまざまございます。
生徒本人や保護者にとっても大きな問題であるため、本人及び保護者の考えや要望などについて十分に受けとめていくように努めているところでございます。
教育委員会といたしましては、今後も各学校に対し不登校生徒への対応の充実を働きかけてまいりますとともに、卒業やその後の進路につきましても、本人や保護者の考えや意向を十分に受けとめ、適切に対応するよう働きかけてまいります。
次に、区立夜間中学についての評価、区の評価ということで、私の方から教育委員会としての評価をご答弁申し上げます。
中学校夜間学級は、議員のお話がございました、その本来の目的としての、戦後の社会情勢や経済的な事情などにより長期欠席や不就学を余儀なくされた生徒を救済するという、義務教育未修了者への教育の機会を提供するためのこと、それからもう一つは、海外からの引揚者や帰国者で日本語能力が十分ではない方のためにという、その大きい二つのために、その機会を提供する役割を引き続き現在も果たしていると認識しているわけでございます。
それから、居場所と学習機会を失った不登校の児童らに、この夜間中学という選択肢もあるのではないか、情報提供すべきではないかというご質問でございます。
現在、夜間学級に通っている生徒は外国人または高齢者の方が中心であり、中学生世代の生徒が存在しない中で、不登校の悩みを抱えた生徒、あるいは抱えたまま卒業を迎える生徒に推薦すべき形になってはいないのが現実でございます。
不登校となった原因はさまざまであり、区としては一人一人に応じたきめ細かな対応が必要と考えます。
確かに、お話しのとおり、夜間中学は、不登校児童などが人生の経験を積む上での一つの選択肢とも考えますが、現在の状況の
中では新たな展開は難しく、各中学校に対しては学齢終了時の進路指導への活用として情報の提供を考えてまいります。
夜間中学の存在を伝える何らかの広報、工夫が必要ではないかというご提言でございます。
現在、区の広報紙、ポスターの掲示、ホームページなどにより夜間中学のPRに努めてございますが、今後、ご指摘の点にも配慮しながら、区民の方に周知を図れるよう努めてまいりたいと考えております。
それから、今般、都の決定として区内夜間中学校における日本語学級の教師が削減される予定である、現在の教育の質を区はどのように維持するか伺いたい、このようなご質問でございました。
お話しのとおり、平成十六年度から東京都の定数配当方針が変更されまして、日本語学級の担当教員数について見直しが図られ、世田谷におきましては日本語学級は二学級ですので、この変更により教員が四名から三名、一人減ることになります。
都では、教員定数の減の対応として、授業の必要時間数を都の講師で補充することとしております。
その結果、来年度の日本語学級につきましては、本年度同様に、日本語の習得状況により四コースに分けて実施できる予定でございます。
教育委員会といたしましては、夜間中学校の日本語学級に限らず、きめ細かな教育を推進するために、区費講師や都講師などを学校の状況に応じて配置し、少人数指導を実施しております。
今後とも、個々に応じた指導を充実してまいります。
以上でございます。
◆三十六番(上川あや 議員)
再質問させていただきます。
夜間中学をどのようにお考えになるかという質問につきましては、区長の夜間中学に寄せる思いをお伺いしております。
私がお尋ねしていない理事者が、尋ねてもいない夜間中学の経緯や役割をお答えになっていますが、話を故意にすりかえる詭弁を伺うつもりは毛頭ございません。
私は、すべての基本は人づくり、その基本は教育にあると常日ごろ述べられている区長の真意を伺っております。
ご答弁なさらないということが、すなわち区長のお答えでありましょうか。
改めてお伺いいたします。
もう一点、教育長に伺います。
夜間中学に関する広報についてですが、指摘した問題点を何ら改善するものとは聞こえてまいりません。
情報の提供の質を高める意思があるのか、ないのか、イエスかノーか、端的にお答えください。
◎熊本 区長
私へのお尋ねでございますが、高い勉学の意欲を持って、夜、厳しい環境の中で学習にいそしまれる方々に、私は敬意を表しております。
そうした考えのもとに区としては、必要とされる人に学習の場を提供するという立場からこれからも考えていきたいと思っております。
以上です。
◎小野 教育長
定数加配等の問題は、東京都の方でも区立学校すべてに課してきた問題でございまして、これについてもいろいろ問題があろうかと思います。
私たちとしては、これを改善するように要求していきます。
それから、情報の質の向上につきましては、できる限り努めていきます。 以上です。
◆三十六番(上川あや 議員)
区長、心の通ったご答弁、本当にありがとうございます。
3政府の調査によれば、社会的な引きこもりの約六割はかつて不登校を経験している、そのようなデータもあるようでございます。
画一化された枠組みに本来多様であるべき人間を押し込める、そういった社会の構造そのものが不適応を生む、その原凶ではないかと私は感じています。
前例に縛られぬ取り組みが今こそこの教育の現場に求められている、そのことを強く申し添えまして、私の質問を終わらせていただきます。