◆三十六番(上川あや 議員)
質問に先立ちまして一言申し上げます。
本日、私からは聴覚障害者への要約筆記を取り上げますが、本日の傍聴席には手話通訳の方とともに要約筆記の方がノートを持って見えられています。
私の質問とあわせてごらんいただければ、うれしく思います。
質問通告に基づき、順次質問並びに提案をさせていただきます。
まず初めに、要約筆記への区の対応について質問させていただきます。
要約筆記とは、その場で話されている言葉を文字情報に置きかえ、聴覚障害者に伝える通訳方法で、手話を使わない聴覚障害者への情報保障として発達してきました。
通常、人の話すスピードは書くスピードに比べて数倍速く、すべてを書き起こすことは困難です。このため、話の趣旨を損なうことなく迅速に伝えるためには、的確な要約と書き起こしの能力を必要とします。これらを総合した技能が要約筆記と呼ばれるものです。
聴覚障害者にとってのコミュニケーションツールとして一般に手話が知られていますが、聴覚障害イコール手話と考えるのは早計であり、事実に反します。
手話が聴覚障害者全体の中で十分なコミュニケーション方法になり得ていない事実を客観的に裏づけるデータがあります。
東京都が実施している調査、障害者の生活実態によれば、対象となった聴覚障害者のうち、手話を使えると答えた人の割合はたった一七・八%にすぎず、この数値は前回調査に比べても五・三%低下しています。
世田谷区内の状況についてはいまだ十分な把握がなされておりませんが、全国的に見て、手話を使える割合は一〇%台にとどまるとの推測もあり、区内の聴覚障害者の中にも手話を使えない方が多く含まれていると推察されます。
高齢化の中、聴覚に障害を抱える方は増加する一方ですが、中途で聴覚を失った方々、難聴となった方々が人生の半ばで流暢な手話を身につけることはもとより困難であり、手話を使える能力には大きな個人差が存在します。
さらに、聾学校などで学ぶ日本手話と、中途失聴者が学ぶ日本語を基礎とした日本語手話とは異なる成り立ちであることが指摘されていますが、こうした事実への認識もまた社会に乏しいのが現状です。
現在、世田谷では、聴覚障害者への情報保障を図る取り組みとして、社会福祉協議会による手話通訳の派遣を行い、毎週金曜日には本庁舎のロビーに手話通訳者が待機しておりますが、もとより手話を使わない聴覚障害者にとって十分な情報保障とはなっておりません。
区内の聴覚障害者からはこれまでにも、要約筆記を公的派遣の対象とするよう要望していると聞いています。
しかし、区の対応は消極的で、要約筆記者の養成も、ニーズに応じた派遣も、そのほぼすべてを民間のボランティアに負っているのが現状です。
厚生労働省では、平成十年七月、市町村障害者社会参加促進事業実施要綱を策定。
市区町村が行うべき施策の第一にコミュニケーション支援を挙げて、要約筆記者の養成と派遣にも積極的に取り組むよう要請しています。
区内の要約筆記サークルでは、個人の時間と労力を無償で割き、区内の難聴学級を初めとした切実なニーズにこたえていますが、学校までの交通費さえ持ち出して活動しているのが実際であり、すべての要望にこたえられないのが実情とのことです。
事は人権にかかわる重大な問題を含んでいます。
医療現場などでは、医師とのコミュニケーションの困難が誤診や事故を引き起こす可能性さえ秘めています。
区はこうした深刻な事態を正面から受けとめ、情報保障に努める責務があると考えます。
そこで、伺います。
第一に、要約筆記の現状とその必要性について区の認識をお聞かせください。
第二に、要約筆記の普及と技能向上に向けた養成機会の提供や個別ニーズに即した要約筆記者の派遣について区として主体的に取り組むおつもりがあるのか、お教えください。
最後に、区の行事における情報保障として要約筆記の積極的な導入を検討する必要があると考えますが、区のご見解をあわせてお聞かせいただければと思います。
引き続きまして、災害時の医療救護活動について、区と薬剤師会との協定を中心に質問させていただきます。
区では震災時など、区内に多数の傷病者が生じる事態を想定し、区内医師会や歯科医師会、薬剤師会との間に協定を締結して、その連携のもとで迅速、円滑な救護を図ることとしています。
区と区内薬剤師会との間に締結された協定によれば、薬剤師会より指定された薬剤師は、二人一組で薬剤師班を構成し、あらかじめ指定された救護所において調剤と服薬指導、ストックセンターでの医薬品の仕分けと管理を行うとしています。
区では、災害救助法の適用があるまで、あるいは東京都の措置がとられるまでの二日間程度、傷病者の救護を行うことを想定し、活動の裏づけともなる医療器具、医療薬品等の備蓄に努めてもいます。
これら一連の取り組みからは、一見して充実した災害時医療体制が構築されているように見えます。
しかしながら、実際、指定を受けている薬剤師の方にお話をお伺いしてみると、その実効性を疑いたくなるような事実が次々と明らかになりました。
私がお会いした薬剤師の方は、区内在住の方ではございません。このため昨年、薬剤師会から本件の打診があった際、家が遠いので対応できないと伝えたそうですが、それでもいいの一言で片づけられ、その後、一枚のファクスが送られてきたそうです。
私の手元にその文面がございますが、担当救護所となる学校の名前と住所、たった三行の業務内容が記されているだけで、それ以外、何の情報もありません。
備蓄されている薬品名、医師や歯科医師との協力関係、ストックセンターの場所、区の担当窓口やその連絡方法、災害時に自発的に出向くのか、招集を待つのかなど、本来必要ないずれの情報についても、それ以後、何の情報の提供もなく、災害時にどれだけの体制が確保できるのかは大いに疑問です。
備蓄された医薬品のリストを薬剤師さんにお見せすると、外科処置に用いる薬剤がほとんどで、町中の薬局にお勤めの薬剤師はそのほとんどを扱ったことがないとのこと。指定薬剤師のほとんどは区内の薬局にお勤めの方であり、経験のない調剤を依頼されても、にわかには手を出すことができないというのです。
応急処置に当たる医師についても、外科医でなければ適切な調剤指示を出すことは難しく、外科的措置を想定していながら麻酔さえない備蓄にも疑問が残ります。
私は医療の専門家ではもとよりございませんが、聞けば聞くほど不安を感じるのが実情です。そこで、これらの問題点を整理し、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
まず、災害時に実際の救護を行う専門家に対して、本来必要な情報が行き届いていない現状は早急に改められるべきです。
区は協定先に丸投げするのではなく、主体的に実効性ある情報発信に努めるべきです。
この点で区はどのように取り組まれるおつもりか、お聞かせください。
また、備蓄内容を精査し再考するおつもりがあるのかどうかも伺います。
最後に、円滑な救護活動の遂行を図る見地からは、医師会、歯科医師会、薬剤師会など連携する各領域が事前に情報を共有する研修の場、合同訓練の機会がぜひとも必要と考えますが、区として積極的に取り組むおつもりがあるのか、お聞かせください。
以上、壇上からの質問を終わらせていただきます。
◎秋山 在宅サービス部長
要約筆記の現状と必要性についてお答え申し上げます。
聴覚障害者の情報伝達手段といたしましては手話が一般に知られるようになってまいりましたが、中途失聴者──中途で聴覚を失った方や難聴者にとりましては、手話は必ずしも十分なコミュニケーション手段になっていない状況がございます。
要約筆記は、手話では情報を得にくい中途失聴者や難聴者等のコミュニケーション手段として有効であり、需要もふえてきておりますので、聴覚障害者の情報伝達に重要な役割を果たしていると認識をいたしております。
二点目の要約筆記の普及と技能向上に向けた学習機会の提供や派遣についてでございます。
要約筆記の養成事業につきましては、東京都で昭和五十七年から始まり、昭和六十年から派遣事業を行っております。現在は、聴覚障害者自立支援センターで都内の個人や団体へ一年間に約千三百件ほどの派遣を行っております。
世田谷区内では、自主的な要約筆記サークルが区内の聴覚障害者のニーズにこたえて活動しており、昨年度は約二百件の派遣を実施いたしております。
また、今年度から社会福祉協議会の助成を受けまして、養成講座を開催いたしております。区といたしましては、聴覚障害者のニーズの把握に努めながら有効な支援策を検討してまいりたいと考えております。
続きまして、区の行事における要約筆記奉仕員の導入についてでございます。
区の行事における要約筆記奉仕員の導入につきましては、毎年十二月に行われておりますふれあいフェスタなどに区の予算で派遣をしているところでございます。
また、総合福祉センターで行っております中途失聴者、難聴者を対象にしたコミュニケーション手段の獲得のための講座などにも要約筆記サークルが協力する形で実施されております。
そのほかにも、区立の小中学校の難聴学級の授業では、百回を超えるノートテーク──先生のお話をした内容を要約してノートに書き込むノートテークを自主グループのボランティア活動として実施されていると聞いております。
今後も、必要に応じて要約筆記奉仕員の導入に努めてまいりたいと思います。
以上でございます。
◎池田 危機管理室長
災害時の医療救護活動について三点ほどご質問がありましたので、私から答弁させていただきます。
まず最初に、薬剤師会に対する情報提供について、区は主体的な立場で情報発信に努めよとのご質問でございます。
災害時の医療救護活動の円滑な実施を図るため、区と薬剤師会とは、医療救護活動について薬剤師の派遣や不足する医薬品の調達に関することを内容とする協定を取り交わしております。
薬剤師会に対する、災害に関する情報提供につきましても、世田谷保健所が事務局となって防災関係機関や関係団体などで世田谷区災害医療運営連絡会を設置しており、医師会、歯科医師会とともに、薬剤師会などの皆様にもご参加をいただいております。
今年度は八月にこの連絡会を開催いたしまして、災害初動期の活動体制に関する意見の交換、災害初動期の医療救護計画の確認、災害に関する区からの情報提供を行ったところでございます。
今後とも、定期的に災害医療運営連絡会を開催するなど、薬剤師会を初め関係機関などへの積極的かつ的確な情報提供に努めてまいりたいと考えております。
次に、災害時の備蓄薬品の内容についての再考──考え直す、見直しの予定はとのご質問でございます。
区が備蓄しております医薬品につきましては、主として、地震により負傷した方々の応急処置を行うため、医療救護所となる小中学校などに配備しております。
備蓄薬品の内容につきましては専門的知識を必要といたしますので、平成十三年度、医師会、歯科医師会などの先生方とともに検討会を設け実施した医療救護計画の全体的な見直しの中で、備蓄薬品の配備計画、内容などについても検討を行いました。
今後とも、医療関係機関と連携を図りながら、本年九月に実施した医療救護訓練の検証結果などもあわせて参考にして、円滑な医療救護活動に一層役立つような備蓄薬品の見直しを進めてまいります。
最後に、薬剤師会などへの研修や防災訓練が必要と考えるが、区の見解はとのご質問でございます。
災害時の医療救護活動を円滑に実施するためには、医師や薬剤師の皆さんの訓練は非常に重要であると考えております。
今年度の防災訓練では、医療救護所に指定している池尻小学校、祖師谷小学校、深沢小学校で医療救護訓練を実施いたしました。いずれも、発災直後を想定した訓練で、医師会の医療救護班の派遣要請や医師会を中心とした医療救護活動の訓練を行ったものでございます。
今後は、今年度実施した医療救護訓練の検証を踏まえながら、発災直後の訓練に限定せず、さまざまな状況を設定し、より実践的な訓練の実施について薬剤師会などと協議を進めてまいりたいと考えています。
以上でございます。
◆三十六番(上川あや 議員)
ご答弁、ありがとうございます。
まず、質問をさせていただきたいと思います。
要約筆記の対応につきまして答弁を伺っておりますと、区内で行われている事業の羅列をしておられまして、その数だけを見ると、それなりに情報保障の取り組みというのは区内にあるのかなという印象を受けるのかもしれないんですが、私自身が当事者の方々からお聞きしている声からしますと、やはり有志のボランティアの方々の懸命な努力に負うところが大きくて、公的な援助、温かな見守りといったことはまだまだ足りないのが現状だと思っています。
答弁では、ニーズを把握して支援策を検討するということですが、実際、遠慮することなく当事者の方が派遣を要請できるシステムをつくるためには、財政面での裏づけですとか、制度の区としての関与ですとか、実行面での取り組みが必要だと思います。
お答えいただきました答弁はこの点を含んでのことなのかどうか、伺います。
◎秋山 在宅サービス部長
支援にはさまざまなものがありますので、区民の自主的な活動を大切にしながらも、財政的な問題も含めまして検討してまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
◆三十六番(上川あや 議員)
ぜひとも慎重な検討、前向きな検討をお願いいたします。
それから、一言。
医療救護につきまして、協定は相手のあることで、なかなか難しい点もあろうかと思います。
しかし、器の中身が伴わなければ意味がございません。今後とも、どのように変化していくのか注視してまいりますので、実効性ある変化をお願いいたします。
以上、私からの質問を終わらせていただきます。